バルデス初勝利の3位決定戦 きのうの甲子園のファンは賞賛もの
at 2002 06/30 12:39
8連敗で区切り 貯金は残った
かの報知新聞 一瞬、何も見えなくなった。ベンチの中央に座っていた星野監督の耳に次の瞬間、恐ろしいほどの大歓声が飛び込んできた。「みんなが立ち上がって、見えなかった。捕られたと思ったんや。長かったね」延長10回裏、代打・平下のラッキーなサヨナラ打で連敗は8でストップ。沸き返るナインを出迎え、熱血監督が16日ぶりに笑った。
遊撃後方へフラフラと舞い上がった打球が、大どんでん返しのドラマを生んだ。10回裏2死二塁、平下の詰まったフライに石井琢が落下点に入った。しかし、ナイン全員の執念が乗り移った白球は、グラブからこぼれ、芝に落ちた。勝利に飢えていた男たちが、津波のようにグラウンドになだれ込むと、平下は手荒い祝福のなかにのみ込まれていった。
「サヨナラヒットなんて生まれてこの方ないです」伏兵は興奮が収まらない。00年オフ、3対3のトレードで近鉄から移って2シーズン目。交換相手の1人、北川は昨年、パ・リーグ優勝を決める代打満塁逆転サヨナラ弾で時の人になった。「おれは何してるんだろうと思ってました」連敗を抜け出す劇的打で、意地を見せつけた。
試合前から雨が降り、中止も覚悟した試合。序盤からリードを許す苦しい展開だったが、8回に2点ビハインドを追いつき、実に69イニングぶりに奪ったリードで連敗を止めた。甲子園で勝つのも6月になって初めて。
「ここまでは予測できんかった」4勝13敗で悪夢の6月にピリオドを打ち、星野監督もひと息ついた。「勝つことが何よりだから。選手はひたむきにやってきた。この姿勢を失わなければ、またいいときが来る」最多で12もあった貯金は2になった。出直し。チャレンジャーになって、闘将が宿敵巨人を追いかける。(坂口 徹)
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