見附のみどりに [荒川洋治・水駅] から
--- 妹は 濠ばたの きよらなしげみにはしりこみ 白いうちももをかくす 葉さきのかぜのひとゆれがすむと こらえていたちいさなしぶきの すっかりかわいさのました音が さわぐ葉陰をしばし 打つ
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夢をみればまた隠れあうこともできるが妹よ 江戸はさきごろおわったのだ あれからのわたしは 遠く ずいぶんと来た いまわたしは、埼玉銀行新宿支店の白金のひかりをついてあるいている。ビルの破音。消えやすいその飛沫。口語の時代はさむい。葉陰のあのぬくもりを尾けてひとたび、打ちいでてみようか見附に。
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